NPO法人生活者のための食の安心協議会は緑提灯の調達、発送、Webサイト管理補助、知財管理、会計管理を行い、緑提灯活動をサポートしています  

 

三.緑提灯が問いかけるもの

 再び緑提灯の増殖カーブを見ていただきたい。2008年2月から5月で爆発的増加速度が一時期沈静化(カーブの傾きが緩やかになる)したかに見える。実は、この時期がちょうど、提灯の無償提供を実費有償への切り替えの時期に当たる。この申し込み減少傾向に、提灯を発送していた面々は実はホッと胸をなで下ろしていた。提灯の供給体制はどうなっていたのか?嶋さんが家族総出で大増産していただいたことは疑う余地がない。それが無ければ、アッと言う間に在庫ショートを起こし、緑提灯運動に期待をかけていただいたお店の方々を落胆させる悲惨な結果になっていただろう。それでも、一時、二ヶ月の待ち時間をお願いしたほどである。誰もが「有償になれば、申し込みは殆ど無くなるよ」とたかをくくっていた。さしもの水島氏も同様の予測をたてていた。しかしその予想はもろくも外れることになる。有償化直後は、直前の駆け込み需要の影響もあり、一時鈍化した申し込みが再びじわじわと増加に転じる。事実、今も緑提灯の話題が殆ど毎日、全国の何処かで報じられ、人々の話題に上り、それに接した人々が運動に参加する。応援隊員に名乗りを上げる。応援隊員が新たなお店を発見する。お店に来たお客さんが応援隊に参加する。この連鎖は今も止まる様相を見せていない。緑提灯ホームページで応援隊を宣言したデジタル隊員は2009年1月現在、2000人を突破しようとしている。彼ら彼女らの名は、ホームページの応援隊ページに氏名のみ淡々と書き加えられていく。ネットを介せずに応援隊員を宣言した「アナログ隊員」を含めると8千人を超えようとしている。その他に、「隠れ」、或いは「勝手に」応援隊を加えると実数は知る由もないが、恐らく10倍を下らないだろう。

 ここで再び緑提灯運動を生命・生態系進化になぞらえてみよう。日本の食の安全と安定供給について日夜心を砕いていた人々の心に宿った「緑提灯」コンセプトは、そこから1000キロも離れた北の大地北海道で形を得た。誕生した「緑提灯」は数々の苦難の中、「生態的協働者:応援隊員」を獲得し、彼らの心の中で先ず増殖した。応援隊員はお店の店主に次々と緑提灯の種を植え、その店を苗床にして、店にやって来る心ある客達の心に種を再び植え付けていった。この2年あまりの間、「食」に対する人々の心の中の環境が緑提灯の種にとって好適な環境へと徐々に変化し始めた。好適な環境の中、緑提灯の種は次々と連鎖反応を起こして分布を広げていく。静かに、ゆっくりと、確実に。そうした中、「餃子事件」は起こった。事件を引き金に、爆発的増殖が始まる。もはやこの連鎖反応が止まることはないだろう。今では、一時期の爆発的増殖速度は無いが、確実、定常的増加を続けている。緑提灯は心ある日本人の心に根をはり、しっかりとした定着を果たしたのだ。

 では、緑提灯の種を心に宿した人々は、これからどうしていくのだろう。ここまで緑提灯の進化を見守ってきた私としては、願わくは、過去の愚かさを繰り返さないで欲しい。「食」が「生命(いのち)」と直結し、「農」が「食」に直結していることを忘れ、そして「農家」が「農」を支えていることを忘れた。その一つ一つのかけがえの無さを忘れた。目の前の価格の安さという誘惑に負け、深部の重要さを軽んじた。「農」、「食」、「生命」の深層から目を背け、それら全てに対する感謝を忘れた。その結果が結局、毎日食の安全安心を心配するようは事態に追い込まれたのだ。この世は全てが深いところで繋がっている。それは、古の哲学の神髄であり、同時に生態学を始め、システム論、宇宙論など現在科学を透徹する真理でもある。いくら人間が偉くなったと(勘違い)しても、その輪からは逃れられない。このことを我々はこの十年の間に思い知った筈である。そうして、更にこれからの十年間、繰り返しそれを知る機会が訪れるだろう。緑の提灯が問いかけるもの、それは「人が生きていくためには良質の食料が不可欠である」、そして「食料自給力の維持が国の基本的要件である」と言うごく当たり前の理(ことわり)である。

 

 

四.おわりに  

 「緑提灯店の目標数は?」と最近良く訊かれることがある。仲間内では、全国の飲食業約75万軒の内、お店で食事を提供する緑提灯の守備範囲内である50万軒の1%、5000軒が目下の目標と話し合っている。が、例によって私は左党の人である。目標という言葉は苦手だ。人々の心の生態系に緑提灯の棲む場所がある限り増え続けるだろう。しかし、進化の旅は止まるところを知らない。姿を変え、仕組みを変え、人々の心と巷をも照らし続けて行くだろう。次は家庭の食卓、冷蔵庫あたりがターゲットになるかもしれない。明滅する勇気交流電球の如き蒼き光が世に満ちていく、居心地の良い空間でいつか見た夢のように。あたかも蒼き燎原の炎のように・・・・。これだから左党の人はやめられない(笑)。

 

筆者:生活者のための食の安心協議会代表理事  横山 和成 2009.12

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