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二. 広がりは生物の如く

その一.誕生

 一では、緑提灯がコンセプトとして人々の心に暁光を射した時期から、具体的な緑提灯店誕生前夜までを辿った。ここでは、初めの一灯が小樽で灯ってから、この文章を書いている2009年1月年頭時点、約1,650店舗に至る道筋を少々研究者の悪弊も手伝って、東京大学の安冨歩氏と大阪大学の時田恵一郎氏らが計算物理学の手法を用いて大規模生態系モデルのシミュレーションから導き出した最新の生命・生態系進化説(中立的進入仮説:参照2)になぞらえて述べてみたい。

参照2:大阪大学の大規模計算科学部門紹介の中で「中立突然変異が促進する生態系多様性の進化説」として時田氏によって紹介

 先ず問題になったのが、提灯の製作についてだった。第一号店は、藤井さんのご厚意により、新店舗開店に合わせて独自にご用意いただいた。現在おなじみの照明を灯したときに「緑提灯 地場産品応援の店」の黒文字の周囲が白く浮き上がるタイプではない。屋号が緑色の提灯に書かれたシンプルなデザイン(図1)だった。余談だが、この仮に零号機と呼ぶべき緑提灯の寿命は長くなかった。始めての冬に屋根からの落雪によってあえなくクラッシュ。したがって記念すべき零号機は現存していない。急遽作った代替提灯(図3)も一年足らずの寿命だった(こちらは「開」店内に展示されている)。冬季の小樽観光の落ち込みをもろに被った形で、「開」の小樽支店は閉店を余儀なくされたからだ。そう言った意味でも、よちよち歩きを始めた緑提灯は決して十分満帆ではなかった。

図1 緑提灯第1号店「おいーっす開」、ご主人の藤井さんと独自の緑提灯 2005年4月

 

図3 「おいーつず開」では、緑提灯が落雪で壊れ、急遽代替提灯を作り、現在も健在 2006年2月(撮影は2008年)

 第一号店「おいーっす開」は、小樽一の観光スポットである「小樽運河」と「倉庫群」を間近に望む位置に鳴り物入りでオープンした「小樽屋台村」のほぼ正面付近に開店した。オープン当初の屋台村各店は北海道、それも小樽の特色を前面に打ち出した意欲的なお店が勢揃いし、道内の新聞やテレビで繰り返し大きく報道された。緑提灯第一号店についても、開店間もない2005年7月4日付け日本農業新聞『四季』に取り上げられている。これが、緑提灯の新聞紙面への初登場である。この様に、第一号店は華々しいスタートを切ったかに見えた。回りには緑提灯コンセプトにピッタリの店が軒を連ね、藤井さんも回りのお店や、屋台村の経営企業(北海道のお土産の御菓子「白い恋人」として有名な企業)に随分と緑提灯の営業をしていただいたそうである。しかし、反応は殆ど「提灯を緑にしてどうするの?」的なそっけないものだったそうだ。結局、小樽に撒かれた一粒の種は、他に拡がることなく、約一年半後に姿を消し、翌2006年12月、札幌の本店玄関に現在のスタイルの大型提灯として復活するまで約一年間ひっそりと藤井さんのオフィスを照らすことになる。この状態は、ちょうど生命進化の過程で、偶然生まれた新種の生き物が生態系に登場し、生き残っていくための足場を築くために欠くべからざる「せめぎ合い」の過程に酷似している。よちよち歩きの新参者が、競争、共同など様々な他者との相互作用を経験した後、偶然にも新参者の適応能力を高める役割を担った他者(生態的協働者)を得て始めて生態系の一員として生息・増殖を始める。普通、生命進化の過程では、この生態的協働者を見出すために膨大な時間を費やすか、殆どがその甲斐もなく生態系から消えてゆく。緑提灯にとっての幸運は、その「生態的協働者」である、北海道産品に思い入れが深く、しかも誕生に立ち会った者達と「居心地の良い空間」を共有した仲間達であり、それが適当な密度で周辺に分布していたことだ。第一号の提灯が、生き残りのせめぎ合いに耐えていた2005年から2006年、極初期の「生態的協働者(後に「緑提灯応援隊員」と呼ばれることになる)」は、それぞれ人事異動により居を十勝地方へ、また関東地方へ移し、鈍重とも思えるほどのゆっくりした増殖を辛抱強く続けることとなる。その中で誕生したのが、「初期緑提灯店」と呼ばれる一群のお店である。次第に運動の広がりに手応えを感じ始めたのもこの頃で、2006年12月6日付けの農業共済新聞6面では、丸山清明氏が自ら顔写真入りの論説記事で緑提灯運動の意義につい述べている。そうした2007年の新春を迎えるころ、十勝地方に数店舗、関東地方特に東京、茨城に数店舗を数えるまでになる。この辺りまでを、生命における増殖の「ラグ期(lag phase:増殖のための誘導期, 遅滞期 (細菌や細胞を培養する際に,増殖期に入る前の細胞数の増加が見られない期.(goo 辞書)))、所謂緑提灯運動の忍従期にあったと言える。

 

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