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■ 第1話 緑提灯1号店 かきと旬鮮料理とおそばの店「開」

大通公園をこえて少し歩いたところに見つけた緑提灯は、普段見かけるものよりも一回り大きなもの。
むしろ店の看板よりも目立つそれは、緑提灯一号店の誇りを持って堂々と輝いている。
コートの前をあわせながらくぐった扉の向こうは、北海道の寒さとは裏腹に迸る熱気で満ちていた。

「緑提灯店になってから、何か変化はありましたか」という質問に「テレビや新聞で何度か取り上げられて反響がありましたよ」とにこやかに答えてくれたのは、やさしい風貌の紳士的な男性だ。
緑提灯のアイデアを、我がNPO代表理事横山と一緒に現実のものにしてくれた、今や有名な緑提灯第一号店のかきと旬鮮料理とおそばの店「開」ご主人である。
久々の再開を祝してグラスを合わせてから、私は直ぐにありきたりのインタビューをすることを放棄してしまった。

おしゃれな雰囲気の店内

 

店の大将が見繕ってくれた見事な料理が、でんと目の前に並べられたからだ。
北海道名物の毛ガニに圧倒され、艶々のイクラ丼に唾を飲み込み、目にも鮮やかな刺身の盛り合わせに溜息が出そうになる。
「ししゃもの刺身が食べられるのはここだけだよ」と指差された先には、確かに今まで見たことのない刺身が。
本州のスーパーの店先に並ぶ安物のシシャモは、実はシシャモじゃないと知ったのはテレビのおかげだったけれども、だからといって本物のシシャモを簡単に食べられるわけじゃなかった。
いつかはと思っていた時に本物のシシャモを干物でいただいたのも、北海道の緑提灯店だ。
それから大方一年経って、今度は刺身でいただけるとは、ありがたいというか驚きに似た感動があった。

他にも、キンキやサメカレイというこれまたはじめていただいたお刺身が、白身なのに脂がのっていて、エンガワ以上に風味があり、コリコリして美味い。
「鹿肉はまずいって言われていますけれど、本当はそんなことないんですよ」
狩の段階から肉を傷つけないようにされたという鹿肉のサラミもまた、北海道ならではの絶品だ。
「こうなったら今回の記事は素直においしかったことについて書こう」なんて、隣に座る横山代表に私はまんまと企画変更の許可をいただくことになる。

どーよ!このツヤツヤイクラ!
後ろに見えるのが
鹿肉のサラミ

 

こんな風に北海道の海の幸、山の幸を存分に味あわせてくれる、それは「開」にとって当たり前のことだ。
「開」のすごさはその一歩先にある。
藤井さんが自慢そうに出してくれた、たくさんのアルバムに、すごさの正体は綴られている。

「開」のメニューの大部分は、様々な趣向を凝らした牡蠣料理。
でももう一つのメインは蕎麦だったりする。
緑提灯店だから国産の蕎麦でおいしいよね、なんてのは序の口で、この店は自分たちで提供する蕎麦自体を育てているのだ。
地場産品応援どころか、自分たちで農業をして食材を生産しようという熱い取り組み。

「開」名物 新鮮な牡蠣

 

アルバムには広々とひろがる蘭越の蕎麦農園の写真が何枚もあり、そこで汗水流す「開」ファミリーの姿がある。
白い花畑の姿に懐かしさを呼び起こされ、雄大な北海道の風景に圧倒される。
「開」の蕎麦打ち職人は全部で4人、そのうちの一人、愛称みとっちは「国産蕎麦は香りが良い」と自信たっぷり。
「おいしいものをお客様に提供するのは、板前にとって一番いい思いだし、宿命です」なんて、なんだかかっこいい。
農場では蕎麦以外にもジャガイモやトマト、ナスなどの野菜、トウモロコシなどたくさんの農作物が育てられている。

畑から直送!自家製のおそば

 

何冊にもわたる農作業風景が綴られたアルバムをめくっていると、藤井さんが「今年は寒さにやられて失敗しちゃいました」と言いながら一つの写真を示してくれた。
それは『十勝コガネ』という品種のジャガイモの写真。
今年、北海道名物のジャガイモに初挑戦したけれども、残念ながら大きなイモに育たなかったのだという。
「こんなイモしか取れなかった」
OKサインのように丸められた指で示された大きさは、直径3センチといったところか。
確かに店頭に並んでいるイモとはずいぶん違う、小さなものだ。
「でもこれがおいしいんですよ。だからうちではそれも料理して出します」
やさしい目をきらきら輝かせながら、自分たちで精魂こめて育てた作物の良さを語ってくれるから、なんだか聞いているこっちまで嬉しくなってくる。

流通の段階で規格外にされてしまうが、イモは大きさが小さくても味が未熟になるわけではない。
それなのに、たくさんの農家が、せっかく育てたイモを規格外として廃棄せざるを得ないのが、日本の食の現状なのだ。
藤井さんによれば、むしろ小さいイモのほうがおいしいのだという。
その小ささを生かした料理があると聞いて、私たちはそれをいただくことにした。
小さなジャガイモを丸ごと脂で揚げてベーコンと一緒に味付けされている、その名も『じゃがまるこちゃん』。
甘いだけではなくて、しっかりと濃い味のする熱々のイモは、ベーコンの脂と実に良く合って期待していた以上においしい。

思わずもう一杯ビールを頼んでしまった。

ちっちゃくてもおいしいよ!
自慢のじゃがまるこちゃん。


おいしいものを食べている時は、人は本当に幸せな顔になるという。
きっと私たちも実に幸福そうな顔をしていたのだろう。
畑から採れたての素材をいただく幸せに、普通なら規格外として処分されてしまう食材をいただくという幸せがあいまっているから、『おいしさ』はより豊かで深みを増したものになっていた。

「お店で大切にしているのは、味はもちろんのこと、器を含めた雰囲気なんですよ」そんな藤井さんの言葉がじんとくる。
「自分たちにとっては日常かもしれないけれども、訪れるお客様は一度きりかもしれない。 だから、毎日、一生懸命、最高のサービスを提供しているんです」
一期一会のもてなしもおいしさの秘訣だ。
「ほかの店に比べたら、うちは価格は少し高い。それでもいい素材を使って、おいしいものを提供したい」

昨今の安値競争とは関係なく、「開」が札幌の人気店として大繁盛する理由が良く分かる。

キンキの塩焼き。
後で骨をスープにしていただいたら
これまた絶品!

 

ほろ酔いかげんになってきたところで、横山代表と藤井さんとの昔話にも花が咲く。
こんな繁盛店でも、かつてはそれなりに紆余曲折あったのだ。
二人はそのころからの仲間である。
店と客という関係を超えて、厳しい波の中一緒に戦った信頼関係があってこそ、緑提灯一号店は生まれた。

提灯といえば赤提灯と相場が決まっていた中で、寒色である緑色の提灯を看板にするのは勇気の要る行動だ。

「はじめは、緑提灯なんてなんじゃらほいと思ったでしょ」
「いや、本当にねぇ」

厚岸湖の風景
壮大です

今となっては酒のつまみになる話も、当時は大変なこと、単なる客が下げてくれと頼んだところでそう簡単に緑の提灯がかかるわけはない。

苦しい時はあったけれどと藤井さんは開の歴史を振り返る。
「一生をトータルで見た場合、自分のやるべき事、やりたい事をやった方がいい。一時の儲けや損は、片目をつぶれば済むことです」
粋を感じる人生観だ。事実、「開」の取り組みは幅広く、北海道の本当においしいものを真剣に提供するだけにとどまらず、農業生産や植林などの環境活動に及んでいる。

地酒もたくさんあります。
地ビールもおいしかった!

店はみんなでやっているのだから、スタッフみんなを記事にしてほしいという藤井さんの心意気に答えて、忙しい合間を縫ってお店の皆さん全員からメッセージをいただいた。

最後にそれを紹介させていただきたい。


みわこ「緑提灯は、店とお客様との信頼関係がすばらしい!信頼される店としてこれからも頑張ります」

まゆ「この店のお客さまにはお子様連れの方も多いのですが、親である自分の目から見ても、国産の食べ物は安心できる。お客様の偽装疑惑のボヤキが嫌だったのだけれど、緑提灯があるから堂々と違いますと言えるんです」

ちなつ「私の祖母の畑が蘭越にあって、農業を子供のころから見てきその大変さも知っています。今、祖母の家の近くに「開」の畑があって、そこで野菜などを作っている姿を見ることが出来るのだけれども、農業の大変さを知っているだけに、その姿勢に「すごい!」と感心しています」

店長「緑提灯を吊るさないかと言われ、はじめは正直何者かと思いました。でも、もともと地場の素材を使っていたので、その目印ならばやってみてもいいかなと思い、はじめたんです。今では緑提灯活動も広がって、自分たちがこだわっていた事が世間に認められたという意味で、とても誇りに思っています」

みとっち「元々すし屋を35年やっていて、その後蕎麦屋を3年やっていて、そこで藤井さんに会ったんです。お客様には店の雰囲気を含めて喜んでいただけるのが嬉しくて、特にまた来ていただいた時が最高に嬉しい」

ひろき(本当の緑提灯一号店、小樽店元店長)「緑提灯をはじめて作るにあたって、いろいろと苦労しました。最初のは、光も映えずに目立たなかったし、お客様にもどうして緑なのかと聞かれたりしました。緑提灯活動は、これからもどんどん広がってくれると嬉しいです」

しんちゃん「見慣れない提灯だったのに、今は全国に広がっていて、旅行に行っても見つけます。やっぱり気になりますね。将来独立して蕎麦屋を開くことを目指していますが、その時は同じ緑提灯の店として、お互い頑張りたいと思います」

おう「中国出身ですが、中国では例えば店の料理で数人がおなかを壊したとしても、それはお客の自己責任になります。日本はその点ずいぶん厳しくて、中でも緑提灯は安心感があり、地元を応援しているイメージがあります。良い活動なので、もっと広がっていってほしいと思っています」

くり「今はいろいろなところで緑提灯を目にするようになりましたね。緑提灯を下げている限りは、地元のものをしっかり仕入れて、細かい点まで気にかけて提供しなきゃ、というプレッシャーがあります」

たむら「緑提灯第一号店として誇りに思っています。今はこの活動も広まって、とても良いことだと思っています」

かん「開のスタッフはみんなやさしくてとても楽しい人たちです。おかげで仕事はとてもいい感じで行えています」

どどーん!参りました。
ケガニ様

ニコニコ藤井さん
カニの身をカニミソに
あえてくれました。

「開」を支える
スタッフの皆さん
輝いてます!

 

*正確には緑提灯一号店は「開 小樽店」ですが、残念ながら閉店されてそのスタッフは皆さん今の札幌のお店で活躍されており、場所は違えども「緑提灯1号店」として誇りを持って頑張っていらっしゃいます。札幌のお店は1号店じゃないとの指摘がありましたが、そこは緑提灯ならではの「心意気」と「ぬるさ」で良しにしてください。

Written by Sakura 2009 November

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